源氏物語・千年の謎ー最終章

丶那先生:どんなものですか。

亦又太心:わたくしは、亡き院がわたくしたちの罪をすべて知っておられたように思えてならぬのです。それを知った上で、わたくしたちの子を東宮になされた。そのお心をわたくしは守りたいのです。 里に帰るとな。ええ、娘が待っております。娘は早くに父を亡くし。わたくしも宮仕えで、そばを離れたゆえ。長らく寂しい思いをさせました。そうか。だが　我は寂しゅうなるな。なんだ、ご冗談を。真の思い出だ。そなたの物語が読めなくなると思うと、毎日に張り合いがなくなるわ。達者で暮らすのだぞ。はい。 その後、源氏はどうなるのだ？世の無常を儚み　隠居するのではないか？いいえ、そのようなことは決してありません。 源氏の君の人生はまだ始まったばかりなのです。それからまた様々なお方と出会い別れ。多くの喜びを味わい。多くの涙を流して生きてよかれるのです。それはまだずいぶん難儀な人生であるな。ええ、あなた様と同じように。同じようにか？遠くより見守っております。これからも、このような栄華を極められるあなた様のことを。そうよ　我の名は光　世を遍く照らす　光だ。 誠に美しい月よ。我もあと幾度、このように月を愛でられることか？おや　随分と弱気な。のう　晴明　我はあとどのくらい生きられる？それはわかりませぬ。 相変わらず役に立たぬ男よ。行成　おぬしも飲まんか。ほれほれしっかり持って。はい。どうやら物語の毒気に当たったようですな。道長様　あなたはやはり運の強き男。 あの女、我が身が鬼となる前に自ら身を引きとは？美しいのう　では一首。この世をば、我が世とぞ思う望月の　欠けたることもなしと思えば。 ご決心は変わりませぬか？ お通ください あの方とお話しせねばならないのです。なりませぬ　ここから先は何人たりとも　入ることはかないません。わたくしは都にて参議の職を担うもの。御仏の前では只人でこさいましょう。仏の胸に抱かれた者には　以後決して触れてはなりません。 そなたは　どこまで　わたくしを苦しめるのだ？まだ　お分かりにならぬのですか？多くの人を惹きつけてやまないあなたは　その有り余る幸せの分だけ血を流して生きるのです。それが貴方の人生。